表題の英文について、日本ではあまり有名で無いと思ったので、書き留めておく。
アメリカの小話だ。トーマス・ジェファーソンが独立宣言の草案をレビューしてもらうため、友人のベンジャミン・フランクリンに文章を送ったところ、ジェファーソンの気の利いた言い回しがバッサバッサと削られていったとのことだ。ジェファーソンは不満だったが、物事を伝えるには文章をシンプルにするのが大事だと説明するため、この看板屋の話をしたということだ。
省略して要点だけ説明する。
ある看板屋が、帽子屋を開こうとしている友人のために看板の案を作った。それは ”John Thompson, Hatter, makes and sells hats for ready money” という文と、帽子のイラストからなる看板だった。彼はその案を数人の友人に見せて直すところがないか聞いてみた。
1人目は「Hatter」は重複していて不要だと考えた。すぐに「makes hats 」が出てくるからだ。
2人目は「makes」は要らないんじゃないかとアドバイスした。お客さんは気に入った帽子であれば誰が作っているかなんて気にしないで買うはずだからだ。
3人目は「for ready money」も要らないと言った。これは現金払いのみであることを示しているが、その時代その地域ではほとんどのお店が現金払いだったから当然省略できるとのことだ。
アドバイスを受けて看板は ”John Thompson, sells hats” となった。
次に見せた人は考えるまでもなく思った。「sells hats」だって!? タダでくれるなんて思う人いないよ。「sells」は消された。
続いて「hats」も消された。帽子のイラストが描いてあるんだから。
看板は「John Thompson」と帽子のイラストだけになった。
この話は心配性なITシステム屋がUIを不必要に複雑にしたり、逆に分かり辛い説明を付け加えて混乱させたりすることと通じている。ダイアログなどの注意書き、エラーやワーニングメッセージを書かなきゃならない時はこの帽子屋の看板のことを思い出すと良いだろう。